21世紀に生きる君たちへ
2007年2月12日
司馬遼太郎さんからの 1通の手紙
「21世紀に生きる君たちへ」
君たちは いつの時代でもそうであったように自己を確立せねばならない ――自分に厳しく 相手には優しく―― という自己を・・・
そして 素直で優しい自己を・・・ 21世紀においては 特にそのことが重要である 21世紀にあっては 化学や技術がもっと発達するだろう 科学や技術が洪水のように人間を飲み込んでしまってはならない 川の水を正しく流すように君たちのしっかりした自己が科学や技術を支配し よい方向に持っていってほしいのだ
「いたわり」「他人の痛みを感じること」「優しさ」
この3つの言葉は もともと1つの根っこから出ているのである
根といっても 本能ではない
だから 私たちは訓練をしてそれを身につけなければならないのである
その訓練とは 簡単なことである 例えば 友達が転ぶ ああ痛かっただろうな と感じる気持ちをそのつど自分の中で作り上げていきさえすればよい この根っこの感情が 自己の中でしっかり根づいていけば他民族へのいたわりという気持ちも出てくる
君たちさえそういう自己をつくっていけば 21世紀は人類が仲良しで暮らせる時代になるに違いない
君たち 君たちは常に晴れ上がった空のように 高々とした心を持たねばならない 同時にずっしりとした足取りで大地を踏みしめて歩かねばならない 私は 君たちの心の中の最も美しいもの見続けながら・・・書いた
もし「未来」という町角で 私が君たちを呼びとめる事ができたら どんなにいいだろう 司馬遼太郎