2011年4月23日 14:54
20世紀からの叱咤激励 司馬遼太郎
21世紀に生きる君たちへ
もし「未来」という街角で、私が君たちを呼び止めることができたら、どんなにいいだろう。
もっとも、私には21世紀のことなど、とても予測できない。ただ、私に言えることがある。それは、歴史から学んだ人間の生き方の基本的なことどもである。
人間は、自然によって生かされてきた。古代でも中世でも自然こそ神々であるとした。自然を恐れ、その力をあがめ、自分の上にあるものとして身をつつしんできた。「人間こそ一番偉い存在だ」という、思いあがった考えが頭をもたげた20世紀という現代は、ある意味では、自然への恐れが薄くなった時代といっていい。
21世紀の人間は、よりいっそう自然を尊敬することになるだろう。そして、自然の一部である人間同士についても、前世紀にもまして尊敬し会うようになるに違いない。
君達は、いつの時代もそうであったように、自己を確立せねばならない。「自分に厳しく、相手に優しく」という自己を・・・
自己中心に陥ってはならない。人間は、助け合って生きているのである。「人」という字を見る時、しばしば感動する。
自然物としての人間は、決して孤立して生きられないように創られている。
「いたわり」「他人の痛みを感じること」「優しさ」これは、本能ではない。
訓練してそれを身につけなければならないのである。
21世紀は、自然に逆らわず、他民族へのいたわりという気持ちも湧き出てくる。
君達さえ、そういう自己を作っていけば、21世紀は人類が仲良しで暮らせる時代になるに違いない。
君達は、晴れ上がった空のようにかただかとした心を持たなければならない。
読み込み中です...